早い段階で得意科目をつくるメリット

中学生や高校生が受験を目指す場合、かならず最初に目指すべき「学習の目標」があります。それは、できるだけ早い段階で得意科目をつくることです。得意教科をつくっておくと、以下のようなメリットがあります。

  • すべての教科に好影響がおよぶ
  • 苦手科目の克服につながる

人には誰にでも、苦手科目があるものです。その場合に取る対策としては、不得意科目を克服するために多くの時間を割くことが一般的です。基本から復習しなおしたり、多くの問題を解くことで、ようやく苦手意識がなくなるわけです。そのような勉強方法も悪くはないのですが、どうしてもストレスがたまりがちです。

実は教育心理学には学習の転移という考えがあり、また似たようなものとして特恵効果という原理があります。この2つは近い意味なのですが、微妙に違います。

一つをマスターすることが根本

学習の転移とは、一つのことをマスターすると、ほかのことまでマスターしやすくなるという心理効果。
たとえば中学生や高校生なら、1年生の段階から、英語や数学など何でもよいので、何か一つ得意 教科をつくってしまう。そうすることによって、社会科や理科、国語なども、しぜんと身に付きやすくなるのです。
語学で言えば、英語をマスターすると、ほかのドイツ語やフランス語、イタリア語、韓国語、中国語なども比較的早く身に付きやすくなります。

その理由は、表面的には違った教科であっても、根底の「勉強の仕方」とか「学習の進め方」、「記憶のやり方」、「理解の仕方」といった部分は共通しているからです。こういった部分を一度でも身につければ、それが方法記憶(手続き記憶)となり、ほかの分野にも適用していけるのです。一般的にも何か一つ飛び抜けた分野を持っている人は、ほかのことも理解しやすくなります。そのほか、今まで自信がなかった人が、何かひとつ得意分野をもつことで、他のことにも自信を持って取り組めるようになったりするものです。

「ひとつを極める」という方法をとらずに、得意科目がない状態のまま、広く浅く勉強していくと、なかなか学校の成績も偏差値も、模試の判定結果も向上していかないということに。得意科目をひとつ作ることは、木でいえば「太い幹」です。どっしりとした幹があってこそ、ほかの教科である「枝」も付けていくことができます。その結果、爛漫たる「花」が咲く、つまり第一志望校や希望の資格試験に合格するという結果が生まれます。

広く浅くという方針では、太い幹がない状態ので、枝も葉も茂らず花も咲きません。
数学や英語は、マスターするために長い年月を要するので、できるだけ中1や高1の段階から、好きになっていくように努力してみてはいかがでしょうか。

もちろん読書が好きという人は、国語でもいいと思います。日本語の文章はすべての教科の元になるので、国語を得意教科に設定することも有効です。そのほか歴史や地理、公民、あるいは物理、化学、生物など、なんでもOKです。文系・理系は問いません。とにかく、できるだけ早い段階で、何か一つ得意科目をもつこと・・・これが、ほかの教科の成績も引き上げてくれるのです。
また近い将来、就職活動(就活)のさいの面接の履歴書に、堂々と得意科目を書けるようになります。

一つの教科内でも影響しあう

一つの科目の学習効果が、ほかの科目にも好影響を及ぼしていくという「学習の転移」。
言葉は悪いですが、ウィルスの感染のように、どんどん波及していくわけです。

これは何も、異なった教科のあいだだけの現象ではありません。一つの科目内の各事項についても当てはまります。たとえば日本史でいえば、縄文時代や弥生時代を制覇すれば、学習の転移効果により、その後の鎌倉時代や室町時代といった、ほかの時代まで得意になっていくわけです。

その意味でも、学習は最初が肝心です。基礎の部分を何度も繰り返して完全にマスターすることが、その後の学習に好影響を与えていきます。特に最初のころは、予習よりも復習のほうに力を注ぐべきだといえます。

勉強というものは、少しずつ階段を上っていくように積み上げていくものですから、「地を踏み固めるようにして」進めていくことが最高の勉強方法なのです。もし英語が大の苦手な高校生で、何としても克服したいと考えているなら、中学英語までさかのぼって、一から学びなおすことも有効です。

そうすれば英語という教科内で「学習の転移」の現象が起き、ドミノ倒しのように次々と波及していって、どんどん英語が得意になっていくことでしょう。

得意科目の力を伸ばす

学習の転移と似た言葉に、「特恵効果」というものがあると最初に述べました。

特恵効果とは、苦手分野には目をつぶり、得意分野をさらに伸ばしていくことによって、苦手分野をふくめた全体の成績がしぜんと向上していく、という考え方です。

苦手科目に向き合うことは、だれしも嫌なものです。それなら無理して頑張らなくても、好きな科目の成績をさらに上げるほうに力を注いでいこう!というわけです。これによって、不得意科目にまで好影響が及び、いつのまにか苦手ではなくなっているというわけです。

ある意味この現象は、得意科目に力を注いだことによって、「学習の転移」の効果が働き、苦手分野に好影響がおよんだと見ることもできます。ただ、学習の転移のほうは、「苦手科目」がない場合でも説明できるのに対して、特恵効果のほうは「苦手科目」にとくにフォーカスした考え方になります。両者は、この点で違います。

さて特恵効果についてですが、中間・期末テストや模試(模擬試験)では、「できそうな問題から解くように」と、よく言われませんか?そうしないと時間が来てしまって、本来解けるはずの問題にまで手が回らなくなるという理由も、もちろんあります。

そのほかに特恵効果という理由もあります。つまり簡単にできそうな問題から選んで解いていくことによって、そのほかの難しそうな問題を解くさいに、頭が働くようになるのです。簡単にいえば、準備運動代わりになるわけです。これは、勉強のやる気を引き出すための大原則である「作業興奮」という観点からいっても、理にかなっています。

簡単な問題をどんどん解いて、ひたすら手を動かしていくことによって、やる気の発生装置である側坐核が刺激されます。作業していくうちに脳が興奮し、回転が速くなってくるわけです。そのことが、難問を解くためのモチベーションアップに役立つのです。