いきなり過去問を解いてみる効果

高校受験や大学入試センター試験、あるいは様々な資格試験に合格するためには、過去の問題集、つまり過去問を研究することが不可欠です。基本は確かに大切ですが、実際の試験では、ひねった応用問題が出題されます。ふだんから慣れている人と、そうでない人とでは点数が違ってきて当然です。空手や柔道でも、ふだんから組手稽古を積んできた人と、試合ではじめて組む人とでは、結果が違ってくるのと一緒です。

ふつうは教科書を中心とした学習によって、しっかりと基本を身につける。それから次の段階として、過去問に挑戦するというのがお決まりのパターンであり、使い方だと思います。しかし基本から積み上げていっても、それで終わってしまっては、いつまでたっても「実践力」がつきません。

空手や剣道においても、相手を想定しないで一人で行う基本稽古は必須ですが、そこでストップしてしまっては、いつまでたっても「強く」はなれません。基本練習のデメリットは、ともすれば実戦の勘が鈍り、「井の中の蛙」つまり「自己満足という罠」に陥りがちだということ。

これを防ぐには、つねに実践のなかに身を置き、実戦のなかで呼吸する。そして、そのなかから自分の欠点や弱点を見出して、基本練習に反映させていく姿勢が不可欠となります。

要するに武道や芸事でも、中学・高校・大学受験の勉強でも、「基本」と「実践」という両輪が欠かせないわけですね。どちらかを欠いた訓練では、実際に使い物にならないことが多々あります。

ふつうは基本から積み上げていって、段階を踏んで、時期が来たら過去問に挑戦するという流れになります。それが無理のない、理にかなった勉強方法だからです。時間に余裕がある人や、コツコツ身につけていくタイプの人は、このやり方でいいでしょう。

しかし、どうしても地道な勉強だけでは気持ちが緩むとか、試験当日まであまり時間がないという人は、
いきなり過去問を解いてみるのも一興です。基本が固まっていない段階で、いきなり最高レベルの問題に挑戦するわけですから、ほとんどの場合、解くことができません。しかし、そこに意味があります。

最高レベルの難問に接することによって、自分が目指している目標のレベルの高さを、「身に染みて」痛感することができます。それは、その後の受験勉強の内容にも反映されていくはずです。

ネットの広告で、たまに「センター試験本番レベル」とかいう模試(模擬試験)を見かけます。
まだ基本が出来ていない高1や高2の学生が、一生懸命に問題を解いています。ふつうに考えると無謀と思えますが、じつはそうでもないわけです。得がたい経験になります。

武道の初心者が、上級者の先輩の胸を借りて稽古するように、とても意味があります。
「こんなに難しい問題を解かなければいけないのか。よし!必ず解けるようになってみせるぞ!」という思いになり、その後の勉強方法にも改良が加えられていくはずです。

前頭葉の顕在意識レベルで「勉強しなければ」と思うのでは弱いですが、扁桃体の潜在意識レベルから押し上げてくる”強いモチベーション”が芽生えるわけです。それは、受験勉強を支える強力な原動力になります。

資格試験まで時間がないとか、あまり勉強時間が取れないので凝縮された、質の高い学習をしたい、という社会人のかたも、1日に1問でもいいので過去問に接する時間を設ける。それだけで、試験の難しさを痛感できるうえに、「それを解けるようになるための勉強内容にしていこう」という気持ちになります。

教科書や受験参考書、入門テキストを順を追って読んでいく勉強法は、時間がある人には適しています。
しかし、そのやり方には、マンネリ化や実践力の欠如といった「落とし穴」もひそんでいます。そこで、つねに過去問に挑戦して、まずはそこから出発する。そうすることで、ふだんの学習に拍車がかかるという効果を期待できるのです。

とくに、東進ハイスクールとか代々木ゼミナール、駿台、河合塾といったような受験予備校や進学塾に通っていない人の場合、毎日のように過去問に接することで緊張感を維持していくことは、目標を見失わないためにも大切といえるのではないでしょうか。

1日にわずかでもいいので、過去問を解く時間を設ける。しかも”学習のはじめ”に行う。そうすれば、「自分は今、本番の実践でつかえる、役に立つ勉強をしている」という気持ちになります。間違いなく目的にむかったレールの上を進んでいるな、という実感がもてるので、受験にたいする不安感が和らぎます。

それとともに勉強のはじめに過去問を解くことで、適度な緊張感が得られます。
そうすると大脳辺縁系にある扁桃体が活性化するので、海馬が刺激され、シータ波が発生します。記憶力・集中力を高めた状態で、そのあとの勉強へと入っていくことができるのです。

「最高峰」をいったん経験してから、そのあと「基本の部分」の学習に立ち戻っていく、ということです。
実戦→基本練習。これこそ、目標達成までの歩みを一気にショートカットできる効果的な方法となります。

ただし学習のはじめに行う過去問は、準備体操代わり程度にとどめておくことです。
そうしないと、「分からない問題」を解こうとするので、ストレスばかりがたまっていくことになるからです。要するに、解けないということを前提に、それをわかったうえで活用していくということ。たとえば最初の15分は、過去問を解いてみる。そう決めておくわけです。そして15分が経過したら、解けようが解けまいが、通常の基本の学習に入っていきます。

このように中途半端なところで過去問を終わらすということは、スッキリしないかもしれませんが、次回の勉強へのモチベーションを高める効果を期待できます。

あとがき

東進や河合塾も過去問を提供してくれますが、自宅で独学している人は、書店で販売されている赤本などでも十分対応できます。ただ、やはり受験予備校では、まわりの人も真剣なので、緊張感が違うかもしれません。彼らは、武道の道場で稽古しているようなものです。それにたいして浪人生などが独学する場合は、道場に通わず通信教育でやっている、といった感じかもしれません。だからこそ緊張感を失わないために、努めて過去問を解くことを日課にすべきなのです。

資格試験においても、危険物乙4、地方・国家公務員試験、ITパスポート、教員採用試験、社労士(社会保険労務士)、ケアマネージャー、日商簿記、介護福祉士、電気工事士、看護師、薬剤師などなど、過去の問題集は欠かせません。これは、どのような資格試験にたいしても言えることでしょう。医師、弁護士、司法書士、弁理士、税理士、一級建築士、不動産鑑定士などは最難関なので、かなりの研究が必要となります。しかし過去問にばかり偏ってはいけないわけで、基本の習得も大切です。そうしないと実務の段階になって、記憶に定着していない、なんていうことにもなりかねません。目的は、やはり実務に生かすために勉強するわけですから。

過去問においては、まずは傾向と対策の解説を読むことが大前提です。そして、できれば前年だけではなく、過去数年間の問題を解けるようにしておくことです。看護師国家試験とか司法試験、管理業務主任者、保育士、簿記2級、気象予報士、日本語検定、英検、TOEIC、TOEFL、情報処理、公害防止管理者、基本情報・応用情報技術者、家電アドバイザー、ファイナンシャルプランナー、数学検定、第一種衛生管理者、測量士補・・・。さらにはアロマテラピー検定、管理栄養士、秘書検定、国税専門官などなど、ほんとうにたくさんの資格があります。

それぞれのテキストを書店で手に取ると、難解な用語が並んでいて難しそうに思えますが、要は「基本のテキスト」と「過去問」を制覇すればよいわけです。それ以外はありません。そう考えると、やることは限られています。ふつうはテキスト→過去問という流れが王道ですが、逆方向に進めてもいいわけです。その場合、かならず基本書にフィードバックし、わからなかった部分を確認していくことが大切です。過去問だけで終わってしまっては、基本練習をおろそかにして、派手な技ばかりを追い求める武道家のように、砂上の楼閣の実力となってしまい、いずれボロが出ることに。ただ、過去問こそ、一気に試験の合格へと引き上げてくれる特効薬とは言えるでしょう。