本当の睡眠学習とは?

睡眠学習というと、機械が埋め込まれている枕から、「事前に吹き込んでおいた音声」が流れてくるようなものと想像しがちです。英語の単語とか歴史の年号、人名などの音声を、”夢うつつ”に聞きながら眠りにつくと、無意識のうちに脳に刻まれ、長期記憶になるという勉強方法です。

昔はよく、睡眠学習機が雑誌の広告をにぎわしたものですが、最近はまったく見なくなりました。
スマホや携帯で録音すれば、簡単に睡眠学習器の代用になるからでしょうか。あるいは効果そのものが疑問視されてきたからでしょうか。

いずれにしても従来の睡眠学習とは、眠りに入る過渡期の時間帯、あるいは寝ている最中に、覚えたいことを暗記しようという試みを指していました。しかし寝入るときに、わざわざカセットやCDを再生しなくても、寝る直前にふつうに受験勉強をするだけで、効果的な睡眠学習になります。

夜の勉強が効果的といわれるのは、そのあとにすぐに睡眠に入れるため、余計な記憶の干渉をうけず、長期記憶として定着しやすいからです。勉強してから、そのあとにテレビを観たり、漫画を読んだりすると、そういった情報が、海馬に取り込まれたばかりの記憶に干渉します。

夜の11時に寝るとすると、9時から11時までふつうに勉強する。そして、すぐに寝付くことによって、睡眠中に長期記憶として脳内にとどまりやすくなります。これこそが本当の睡眠学習です。

朝起きた時に、かんたんでもいいのでザッと寝る前に学んだことを復習すると、さらに記憶の定着がうながされます。そして、翌日の夜の寝る前にも、2回目の学習(朝を入れれば3回目)をすれば、かなり長期記憶として定着する確率が高くなります。これを1セットとして、2日単位で学習を進めていってはいかがでしょうか。

従来の睡眠学習では、顕在意識が薄れていく中で音声を流していました。ということは論理的思考を担当している、前頭葉のワーキングメモリが働きづらいことを意味します。催眠術の暗示でもそうですよね?意識が薄れて朦朧としたところで、暗示の言葉を吹き込もうとします。

こういったトランス状態というか変性意識状態のほうが、顕在意識のフィルターを外せるので、意識の抵抗を受けず、すんなりと潜在意識にメッセージを届けられるからです。そこから発想を得たものが従来の睡眠学習といってよいでしょう。そのため、効果があるのは、英単語や熟語、連語、構文、歴史の年号や事件名といった「とくに考える必要のない単純なもの」限定だったのです。

しかし寝る前に勉強するだけでいい「本当の睡眠学習」では、数学や国語(現代文や古文、漢文)といった、論理的思考を要する教科にも効果が期待できます。起床時の意識がはっきりしているときに勉強するからです。もちろん英単語や歴史の年号でもOKです。こちらのほうが、よっぽど自然な学習ではないでしょうか。
寝ながらの学習には、脳にたいしてどんな副作用が潜んでいるかわかりません。

記憶の整理や定着は、従来は夢を見ている浅いレム睡眠で行われているとされてきました。
しかし最近では、記憶の整理は深いノンレム睡眠中に行われることがわかってきました。電気工事でも電源を切ってから、配線のつなぎ替え工事をするように、記憶の整理や定着作業も、脳を大幅に機能ダウンさせて行なった方が効率的に進むのです。

そのため寝る前に食事をしたり日中の運動量が少ないと、深い眠りが取れなくなり、記憶の定着に影響があるかもしれません。寝る前の3時間は食べない、日中はできるだけ体を動かすということも、大切な「勉強の仕方」の一環なわけです。

このように見てくると、睡眠学習といっても、寝る瞬間とか寝る前だけに気を使えばいいのではなく、1日をトータルで考える必要があるわけですね。寝ているときに音声を再生すると、脳がゆっくり休めない可能性があります。その意味でも、寝る直前に学習したら、あとはぐっすりと眠ることは理にかなっています。