海馬からシータ波を出して記憶力アップ!

海馬とは、脳の奥の方にある「記憶の中枢器官」です。大脳辺縁系という比較的古い脳の一部分になります。前頭葉のワーキングメモリにある短期記憶を反復していると、海馬へと移行し、長期記憶になります。

海馬が活性化されていれば、それだけ記憶力が高まり、少ない反復回数であっても、より強固な長期記憶になっていきます。そのカギを握る指標こそが、シータ(θ)波です。海馬からシータ波が出ているときというのは、”記憶の管制塔”である海馬が活性化しているということ。言い換えると、外部からの情報を記憶に焼き付けようとスタンバイしている状態。

ですから海馬からシータ波を出すことに成功すれば、そのときに外部から入ってくる知識は、長期記憶として定着しやすくなるわけです。ちなみに海馬とともに、前部帯状回というところからもシータ波が発生します。
これも大脳辺縁系にあります。

脳波にはシータ波のほかに、アルファ(α)波やベータ(β)波、デルタ(δ)波があります。このうちデルタ波は、ぐっすり眠っているときに現れる脳波なので、受験勉強に関係のある脳波は、最初の3つということになります。

シータ波は集中力と記憶力が高まっている状態を表し、アルファ波はリラックスしているときに発生します。
ベータ波は脳が活動しているときや、イライラしているとき、マンネリ化して飽きてきたときなどに発生します。つまり効率的で質の高い勉強方法をしていくには、いかにしてベータ波にならずに、アルファ波やシータ波に持っていくかということがポイントになります。

よくアルファ波ということが注目されますが、これは目を閉じるだけで簡単に出現します。しかし、眠気を伴うため、そのまま眠ってしまう危険性を秘めています。その点、シータ波も、寝入りばなに現れる脳波なので、多少は眠くなったりします。しかし、その直後に勉強に入れば、アルファ波よりは眠ってしまう危険は少ないといえます。海馬から出るシータ波は、「外界に興味が向けられた状態」なので、睡眠に陥りにくいのです。やる気満々な状態であり、モチベーションが高まっているわけです。いい意味で緊張感がある状態になります。

シータ波が海馬から出ている時というのは、先ほど述べたように、外界のものに興味をもって、それを記憶に焼き付けようとスタンバイしている状態。何かを記憶したり暗記したりする絶好のチャンスです。このときを逃さずに、すぐに学習に入っていくことこそ、最高に記憶力を高める方法であり、究極の「記憶術」です。

シータ波を出すには?

目にしたもの、耳にしたことを長期記憶として、すぐさま強烈に海馬に定着させてしまうシータ波。
それでは、そんな素晴らしい「記憶の特効薬」であるシータ波を発生させるには、どうしたらいいのでしょうか?それは、以下のことがポイントになります。

  • 興味をもつ、好奇心をもつ
  • 運動する
  • 場所を移動する
  • 居眠りする

「はじめてのこと」に遭遇すると、海馬は自然とシータ波を発生させます。どんなことでも、最初に経験したことが記憶に残りやすいのは、そのためです。しかし中学・高校入試や大学受験の勉強では、つねに新鮮でいることは難しいところがあります。毎日、同じようなノルマを淡々とこなしていくからです。

「はじめてのもの」ではなくても、勉強に興味や好奇心をそそぐことによって、同じようにシータ波を発生させることができます。勉強を面白く感じたり、好きになることは、もっとも有効な方法です。「好きこそものの上手なれ」ともいいますよね。勉強に興味をもって、自分から進んで取り組んでいるときはシータ波が発生するので、復習の回数が少なくても長期記憶に定着しやすくなります。LTP(長期増強)が起きやすくなるからです。LTPとは、一度強まった電気信号の伝達が、長期にわたった持続する現象。これこそ長期記憶の正体です。

基本をしっかり身につけて、段階を踏んで進めていくことで、自然と勉強が分かるようになります。どんどん進んでいくので勉強が面白くなってきます。これこそシータ波を発生させる「王道の勉強方法」といえるでしょう。

そのほか勉強を好きになるには、何か趣味と結びつけたり、勉強以外のことでご褒美をもうけたりすると効果的です。英語だったら、洋楽を聴いたり、字幕なしで好きな映画を観たりというように、趣味と連結させていくわけです。また1時間頑張ったら、好きなDVDを観るというように自分で報酬を設定すれば、勉強に集中でき、シータ波が発生します。

小学生の子供だったら、ほめてあげることでシータ波が発生し、それが勉強のやる気へとつながっていきます。自分で自分をほめるには、朝に必ず達成できるノルマを決め、それを成し遂げて達成感を味わうことで代用できます。できるだけ目標を数値化することで、やりきったときに達成感が高まります。

勉強をだらだら行なっていると、どうしても単調になり、疲れてきて集中力が低下してきます。脳波がシータ波からベータ波へと移行してしまうのです。そうなると、記憶力も下がってきて、効率よく頭に入らなくなります。そういったときは長くても1時間ずつ勉強を区切り、適度な休憩をはさみながら学習していくことです。

合間に短い休憩時間を設定することで、それが報酬(外発的動機)になって受験勉強を頑張れますし、休憩することでシータ波が復活します。それが、次の勉強へのモチベーションとなり、原動力になります。
休憩を終わって、再度勉強に取り組むときには、勉強にたいして「新鮮さ」を感じれるようになります。これがシータ波の発生をうながします。だらだらと連続で長時間勉強していたのでは、こうはいきません。

要は「勉強のリズム」をつくれば、単調にならずに、つねに海馬からシータ波を発生させられるわけです。
学習が単調になり、疲れてきたなと思ったらベータ波に傾いてきている証拠。そういったときは、スパっと勉強をストップし、休憩に入りましょう。

運動は、記憶力を高める簡単な方法

運動は、記憶力をアップさせるための、もっとも簡単な方法です。
運動することによって、海馬は喜びます。つまりシータ波が発生して、集中力や記憶力、やる気が高まるということです。どうしても試験勉強が好きになれないとか、面白みを感じられないという人は、無理に感じようとせずに、勉強に運動を上手に組み入れていきましょう。

なかなか勉強に集中できないとか、あまり記憶できないという人にかぎって、長時間、机の前に座って体を動かさない傾向があります。ですから行き詰ったら、机の前を離れて、軽く体操してみたり、ストレッチで筋肉をほぐしてあげればよいのです。それだけで海馬からシータ波が発生して、記憶力を高めることができます。

もちろん運動による効果はシータ波だけではなく、脳の血行促進という面からも記憶力増強に役立ちます。
またストレスの解消になるので、ストレスホルモンのコルチゾールを少なくできます。コルチゾールが増えすぎると海馬に損傷を与え、記憶力を低下させることが知られています。運動は、それを防げるわけです。

エクササイズによる記憶力アップで、もっといい方法は、勉強に入る前に軽く運動をすることです。
するとシータ波が発生するので、その後の勉強効率が飛躍的に高まります。ただし、あまりに激しい筋トレなどを行うと、疲労感が出てきて、かえって勉強に集中できなくなる危険があるので、学習前の運動は軽いものにとどめます。体操や柔軟体操、有酸素運動がオススメです。休憩時間にも行いましょう。

そのほか咀嚼(噛むこと)も頭部の運動になるので、シータ波を発生させます。よく噛むことは、それ自体、海馬を活性化させます。ですから受験生は、普段の食事でよく噛むように心がければ、海馬が鍛えられ、シータ波が発生しやすくなります。受験勉強に入る前に、ガムやスルメをかじってもよいでしょう。

なお運動といっても、堅苦しく考える必要はありません。
有酸素運動ほど息の切れるものではなくても、指でリズムをとってみたり、「貧乏ゆすり」をすることも海馬を刺激します。そのほか音読したり、漢字や英単語のスペルを書き取りすることも、シータ波を発生させます。できるだけ五感を使うといいと言われるのは、体の動きを伴うことでシータ波が発生しやすくなるからです。

場所の移動だけで記憶力が高まる

場所を移動することも、海馬を活性化させ、シータ波を発生させます。
海馬には場所細胞(場所ニューロン)というものがあり、ここを刺激することになるためです。場所を移動するだけでいいのですから、ひんぱんにトイレに行ったりすることも有効です。そのほか、勉強部屋のなかをグルグルと歩き回ることもオススメ。これなら運動不足解消にもなるし、場所も移動できて一石二鳥ですね。

ですから先ほど述べた運動に関しても、その場で行うストレッチやスクワット、腕立て伏せ、腹筋、踏み台昇降、エアロバイクなどでもいいのですが、できるだけ移動を伴うほうが、もっと効果的です。その意味ではウォーキングやジョギングがいいのではないでしょうか。こういった場所を移動しながら行う有酸素運動は、前頭葉のワーキングメモリも活性化させることがわかっています。ワーキングメモリも記憶にかかわる箇所なので、一石二鳥になりますね。

場所を移動するという意味は、このように常に動き回っている状態もそうですし、場所を移動して勉強するということでもあります。たとえば普段は勉強部屋でしか学習しない人なら、たまには居間や和室などに行って勉強してみる。あるいは、どこか家の中の「お気に入りの隅っこ」を見つけて、そこで勉強してみる。そう考えると、いくらでも「新しい場所」は見つかりますね。先ほど「はじめてのもの」ほどシータ波を発生させて記憶力が高まると述べましたが、勉強に新鮮さを感じられなければ、環境を新鮮なものに替えればよいわけです。

もし時間に余裕があれば、進学塾や予備校の自習室、学校の図書館、喫茶店、ファミレスなど、いろいろと場所を変えることで海馬が喜び、シータ波が発生しやすくなります。とくに場所が見つからないという人は、外を歩きながら英単語を暗記したり、部屋の中を歩き回ることでもよいわけです。歩きながら覚えたいことを記憶する方法は、記憶力を高める方法として大変効果的です。

居眠りの睡眠学習効果とは?

居眠りすることも、海馬からシータ波を発生させます。
疲れたあとに居眠りをすると、脳がスッキリすることは誰もが経験していると思います。その理由はベータ波に傾いた脳が、居眠りをすることでシータ波になったからです。

居眠りするということは、目を閉じ、外界からの視覚情報を遮断するということ。そして10~15分後に目覚めた時は、「新たな世界」との出会いになります。先ほどの「はじめてのもの」ほど新鮮さを感じるということは、居眠りや昼寝にも当てはまるわけですね。

居眠りに入ると、人はまず、深いノンレム睡眠に入っていきます。シータ波というのは、その途中にある、うつらうつらとした浅い眠りのときに発生します。つまり睡眠への移行期に当たります。アルファ波は閉眼するだけで発生しますが、さらに意識が沈んでいくとシータ波に入っていきます。その意味では、顕在意識を離れ、潜在意識の領域に入っている段階といえます。

この段階で目覚めれば、最高に記憶力が高まった状態で勉強に取り組めますが、あまり長く深く眠りすぎると、デルタ波に移行してしまい、寝起きにボーッとしてしまいます。寝すぎると夜の睡眠にも影響しますし、そのあと勉強しづらくなるので、長くても20分までがよいでしょう。なお、居眠りは昼の3時までにしておいたほうが無難です。その時間を越えると、睡眠のリズムに影響を与えて、夜に寝付きにくくなります。

居眠りをする効果は、目覚めたあとにシータ波が発生するだけではありません。睡眠中に、直前に学習したことの記憶を整理する効果もあります。連続で勉強していると、海馬に乱雑に知識を投げ入れることになります。そうなると満杯になって、お互いに影響しあって、記憶の干渉をうける可能性があります。

そこで休憩時間に10分程度の居眠りをすることによって、乱雑に投げ入れた雑多な記憶を整理整頓できます。その結果、海馬に空きスペースができるので、そのあとの勉強で、スムーズに海馬に記憶が入ってきやすくなります。これこそ、本当の睡眠学習です。

休憩時間に運動ばかりしてしまうと、疲れるかもしれません。ですから、運動と居眠りをうまく組み合わせて、集中力と記憶力のアップに役立てていきましょう。