五感をフル活用して記憶しよう!

五感は、外部からの情報を取り込むための「最初の入り口」です。ここを通過してこそ、はじめて脳が認識することができます。五感には、目から入ってくる視覚、耳からの聴覚、においをかぐ嗅覚、肌や筋肉、内臓からの情報を受け取る触覚、いろいろな味を楽しむ味覚があります。

なお便宜上、「五感」という言葉を使ってはいますが、試験勉強に使える感覚器官は「視覚・聴覚・触覚」の3つになります。もちろん匂いや味が必要な資格試験では、すべての感覚を使うことが有効な勉強法となります。

さて、中学・高校受験を目指す勉強、大学受験を目標とした学習では、ともすれば目で読む(黙読)だけという勉強方法に偏りがちがちです。もちろんヒアリングをしたり、音読をしたり、英単語の書き取りをすることもあるでしょう。また板書をノートに写したりします。しかし、それぞれの感覚を分離して使うよりも、できるだけ連動させたほうが、「脳への情報入力の量」が格段に増えます。 そうすると記憶を担当している海馬が、「より重要な情報である」と判断して、長期記憶へと変換されやすくなります。

興味のあることは「情報の質が高い」ので、LTP(長期増強)が起きやすく、記憶しやすいものです。
関心があることだったり好きなことは、すぐに覚えられるわけです。また反復することで、ようやく記憶できるのは、「1回1回の情報の質は低い」状態であっても、送り込む回数を増やすことで、総体的に「情報の質が高くなる」からです。その結果、興味のあることと同様に、海馬に重要な情報と認識させることが可能になります。

五感を活用して、一度に送り込む情報量を増やせば、「興味をもつ」ことと同じような「記憶力を高める効果」が得られるわけです。たとえ、それほど面白くない勉強内容であっても、です。そのため少ない反復回数であっても、長期記憶として固定されやすくなります。

「勉強しているつもり」を防止する効果も

目だけを使ってテキストや教科書を読んでいると、眠いときなど、本当に読んでいないかもしれません。
目は文字の上を走らせている、つまり網膜には映っているけれど、脳は認識していないような状態ですね。
眠いときのほかにも、なにか気がかりなことがあるときも、こういった現象は起こります。

人は、前頭葉にあるワーキングメモリというところに、外界からの情報や、過去の記憶を集めて思考しています。ワーキングメモリの容量は非常に少ないため、何か気がかりなことがあったり眠気があると、別のことで占領されたり、頭が働かなくなってボーッとすることに・・・。気がかりなこと(過去の記憶)のほうが、外部から入ってくる情報より強ければ、気がかりなことがワーキングメモリ全体を占拠してしまいます。

このような「勉強しているつもり」を避け、つねに集中力を発揮し、質の高い状態をキープするためには、つねに2つ以上の感覚を連動させることです。たとえば声に出して音読すれば、目でも読むし、自分の声も耳に入ってくる。さらに喉の発声器官や口元の表情筋、あごを開閉する筋肉も使われます。これだけ連動させれば、別のことでワーキングメモリが占拠されることもありません。

ただ、つねに複数の五感をつかって記憶したり学習すると、疲れるかもしれません。
そういったときは黙読と、五感をフル活用した勉強法を「交互に」行なうこともオススメ。そうすれば、それぞれの勉強法が新鮮に感じられるので、マンネリ化を防ぎ、受験勉強に張り合いが出てきます。

それでは五感を活用した勉強法には、どのようなものがあるのでしょうか?

  • 指でなぞりながら読む
  • 音読する
  • 書き取りをする
  • ディクテーションやシャドーイング

読み方を工夫する

ただ目だけを使って読むことは、黙読であり、これでは視覚だけしか活用していません。
そうすると前述したように、たとえ目が文字を追っていても、実際には頭が認識していない可能性もあります。そういったときは、同時に触覚や聴覚を連動させましょう。夜おそくて眠いときや、なにか気になることがある場合に有効な手段です。

たとえば、何度読んでも文章が頭に入ってこない場合、人差し指でなぞりながら読んでみましょう。
そうすると指で指した文字の部分に、しぜんと意識を集中できるようになります。これは、周囲がうるさかったりするとき、誰でもしぜんと行うのではないでしょうか。これを普段の学習でも活用するのです。
ただ目だけで文章を追うよりは、脳に情報が入ってきやすくなります。「情報の質がアップする」ので、ただ目だけで読むよりは記憶しやすくなるのです。ネットの検索で調べるときは、マウスカーソルを指の代わりにしてもいいかもしれません。

これと同じ原理で、黙読だけでは集中できない場合、声にだしてみましょう。
冒頭でもふれたように、音読すると視覚、聴覚、触覚を連動できます。そのため、どうしても眠いときに効果的。また人は、耳から聴いたことは記憶に残りやすいものです。人が言った、ちょっとした言葉でも、何年たってもすぐに脳内で再生できたりしますよね?
何か覚えにくい部分があったときは、その部分に限って音読すると、長期記憶になりやすくなります。

ただし音読の欠点は、読むスピードが遅いということと、概要理解には向かないという点。
声に出すわけですから、なかなかテキストや教科書が先に進んでいきません。また概要をざっと理解したり、ポイントだけをつかむには速読したほうが効果的です。細かいところを飛ばし読みすることで、概要が見えてくるからです。しかし音読すると、一語一語を正確に拾っていくので、そのことが概要理解をさまたげます。
どちらかというと熟読や精読といった範ちゅうになります。

先ほど述べたように、いくら五感を連動させた記憶法がいいからといって、そればかりを連続でしていると疲れてしまいます。また、なかなか先に進まないということにも・・・。そこで理解を必要とする箇所に関しては、ふつうに黙読する。そのうち勉強が単調になってきたり、眠くなってきたり、記憶すべき個所に来たら、そのときに音読したりして五感を連動させることがオススメの勉強法です。

要は、できるだけ単調を避け、メリハリとリズムをつくっていきましょう、ということです。
このページの文章も、もしもタイトルで適度に区分けしなかったり、4行おきくらいに改行しなかったり、読点が少なかったり、色付けをしなかったら単調になって読みづらくなるはずです。メリハリが大事なわけですね。

手を動かすことで長期記憶になる

五感を使った記憶法の中で、もっとも強固な長期記憶になるのが「手を使った勉強方法」です。
子供のころに漢字の書き取り練習をしたと思いますが、大人になっても書き順は、ある程度は覚えているものです。書き順を思い出そうとするとき、手を動かしながら記憶をたどりますよね?つまり手が(体が)記憶しているわけです。これは自転車の乗り方の記憶といっしょです。自転車の乗り方は、一度覚えれば、生涯忘れることはありません。

このように体を使った記憶を、手続き記憶(方法記憶)といいます。いわゆるノウハウ的な記憶に当たります。意識しなくても、体が勝手に動くことってありますよね?茶道でも武道でも、一定の手順を踏むものは、体が覚えている手続き記憶です。とくに考えなくてもアウトプットできるので、潜在記憶の一種になります。勉強の習慣づけも、体で覚えるので手続き記憶の仲間です。

大人になっても漢字の書き順を忘れることがないように、手を使って覚えたことは、長く忘れない長期記憶となります。手続き記憶は大脳基底核や小脳がかかわっているといわれています。言ってみれば根無し草のような知識記憶ではなく、大脳という大地に、深く強固な根を張った記憶とでもいいましょうか。

ですから漢字や英単語などは、できるだけ手を使って、紙に何度も書く練習をすることが大事です。
このとき声に出しながら発音すれば、視覚、触覚、聴覚の3つを連動できます。すると、黙って手書きするよりも、脳に送られる「情報の量」が増えるので、より速やかに長期記憶化されていきます。

なお音読することも、口の開閉や発声器官など、体の動きを伴うため手続き記憶の一種になります。
何度も繰り返して暗唱できるようになると、無意識にでも口をついて出てくるようになります。書き順を手が覚えていることと同じで、「口が覚えている」わけです。
もちろん実際には、脳が記憶していることは言うまでもありません。ただ、意識を介在させなくても(無意識であっても)、「体が勝手に動くことがある」わけですね。ここが単なる知識とは異なる点です。

このように利点が多い書き取り練習ですが、音読のケースと同じく、何でもかんでも手書きすることはオススメできません。ここぞというポイントに絞って、短時間だけ手書きを活用する。そうしてこそ効果的な「記憶力を高める方法」となります。マンネリ化を防ぐことに役立ちますし、眠気を追い払うこともできるのです。

なお手を動かすことは、情報の取り込みとは別に、脳を刺激します。よく、クルミなどを手に持ったり、親指を交互にくるくる回転させるような脳トレのエクササイズがありますよね?人の脳の頭頂葉にある「体性感覚野」には、指やアゴからの入力がもっとも多いといわれています。ですから指をつかって手書きすることは、効果的な脳活にもなっているわけです。そのことが記憶力をさらにアップさせていることは言うまでもありません。

英会話の練習と五感の連動

英会話では、たんにテキストを目で読むだけではなく、実際に発音して、相手を想定して練習していきます。
こういったやり方は、しぜんと五感を連動させた勉強法になっているわけです。

英会話のトレーニングでは、ディクテーションやシャドーイングといった練習法があります。
ディクテーションとは、録音してあるネイティブの音声を聴きながら、それを文字として書き起こしていく作業。これによって、正確に聴き取る脳力が向上し、リスニング力がアップするのです。この場合、聴覚、触覚、視覚を使っています。視覚を使うのは、自分の書いた文字を見ているからです。ですから、記憶や理解が急速に進んでいきます。

シャドーイングとは、リピーティングの一種で、ネイティブの発音が聞こえたら、影が身に沿うように、すぐさま真似して発声するトレーニング法。慣れないうちは、テキストを使えば視覚も連動できます。ワーキングメモリに音声が残っているうちに発声するので、ネイティブとそっくり真似て発音することができるのです。

高校受験や大学受験を目指している人は、英語の勉強として取り入れてみると面白いかもしれません。TOEFL(トーフル)やTOEIC(トーイック)を目指している人なら、必須の勉強法になります。

以上のように目だけを使った黙読や速読、精読、熟読も大切な要素ではありますが、それ以外の聴覚や触覚を連動させると、さらに長期記憶へと定着しやすくなります。ただ、その場合でも、つねに五感を連動させるのではなく、あくまでも視覚を軸としつつ、ここぞという時に限って、「伝家の宝刀」「記憶の助太刀」として聴覚や触覚を連動していくようにしましょう。