暗記のコツとは?

効果的な暗記の方法というものはあるのでしょうか?
もちろん一夜漬けとか徹夜で、完璧に覚えられる記憶術というものは存在しません。もしも仮に試験まで記憶を保持できたとしても、そのあと急速に忘れていくことは逃れられません。付け焼刃だからです。

効果的な暗記方法のコツは、以下のようなものです。

  • 集中する
  • イメージ化を行う
  • 反復する

王道といえば王道かもしれません。一般的にいわれている暗記法というものは、2番目のイメージ化だけを抽出したものです。語呂合わせや写真記憶法、場所記憶などなど・・・。しかし、本当に効果的な暗記の方法にするには、脳の状態を整えたうえでイメージ化を行い、その後も何度も反復することです。これこそが脳の特性にのっとった暗記術となります。

まずは集中する

効果的な暗記方法のひとつめは、集中するということです。
集中しなければ、けっして脳の奥にある海馬へと到達できません。人の記憶は、次のようなルートを通っていきます。

  • 外界からの情報を、五感を通して受け取る
  • 視覚野や聴覚野で処理する
  • 前頭葉のワーキングメモリにそれらを集めて、統合する
  • 印象が強い情報は、海馬に送る (ここで1か月間ほど保持)
  • 側頭葉などに分散して長期記憶化する

まず、覚えたいものがあったとき、集中しなければ脳へと入ってきません。たとえば目を開けていても、何かほかのことを考えていれば、視覚経由の情報はあまり入ってこなくなります。

集中するとは、どういうことでしょうか?受験勉強をするときは、それだけに気持ちを向けるということです。テレビを観ながらとか音楽を聴きながらでは、集中しているとはいえません。たしかに勉強内容は、おぼろげながら頭に入ってきているかもしれません。しかし視覚経由でテキストの文章が脳に入ってきているときに、同時にテレビの映像が入ってくるわけです。そうなると前頭葉のワーキングメモリに、両方の情報が混在することに・・・。

これでは海馬に送られる情報量が減ってしまうことになります。
海馬では重要な情報のみを厳選して、長期記憶の保管庫へ移す働きがあります。教科書とテレビの両方の情報が入ってくると、集中力が半分になります。いいかえると、「ぼんやりした情報」です。そうなると教科書の情報の「重要度」が半減してしまうので、海馬が重要と判断しなくなり、忘れやすくなるのです。

効果的な暗記方法のコツは、情報が入ってくる最初が肝心です。脳に情報を取り込むときに、全身全霊で集中する。そうすることによって「明瞭な情報」となるので印象が強くなり、大脳辺縁系の海馬が「重要な情報」と判断してくれるようになります。その結果、少ない反復回数でも長期記憶になりやすくなるのです。

部屋の状態や悩みなども関係してくる

「自分はテレビを観ていないから大丈夫だ」とは言えません。
勉強部屋は雑然としていませんか?アイドルのポスターやフィギュア、漫画本、ぬいぐるみ、などなど・・・。

勉強しているときに、これらが目に入るということは、視覚経由でその情報が脳に送られているということです。そうなるとワーキングメモリの何パーセントか、あるいは何十パーセントかを占領することになります。そのぶんだけ勉強内容がぼやけてしまうことになるのです。その結果、印象度が薄れ、海馬における記憶の重要度が減少してしまうことに・・・。

テレビでも音楽でも、部屋の置物でもそうですが、勉強以外の情報が脳に入ってくると、ワーキングメモリを浪費してしまいます。ここの容量は意外にも少ないので、節約しなければなりません。静かな環境で学習することが推奨されるのはそのためです。

そのほか悩みごとや心配ごと、恋愛の問題など、気がそれる要因となる「脳内の記憶」も、ワーキングメモリを占領し、暗記作業を邪魔することがあります。そういった気持ちを乱す問題がある場合は、紙に書きだしてみたり、大きく深呼吸すると、副交感神経が優位になってリラックスできます。脳波がアルファ波になり、それからシータ波へと移行していきます。

そのほか体の痛み、かゆみ、蒸し暑さ、肌寒さは、体性感覚として脳に送られ、ワーキングメモリを占領します。工事の騒音があれば、それも聴覚経由で脳に取り込まれ、ワーキングメモリを浪費して勉強の集中をさまたげます。効果的な暗記方法にするには、こういった問題をクリアして、集中しやすい状態に整えることが大事になります。暗記したいものだけを脳に入れる、ということです。

イメージ化すると覚えやすい

以上のような集中した状態をつくったうえで、右脳のイメージ記憶術を行えば、効果的に暗記することができます。イメージをつかった暗記の方法といえば、ごろ合わせが代表的です。そのほか英語であれば、情景を想像しながら、感情移入して読むこともイメージを活用した勉強方法です。

歴史だったら、年号を語呂合わせする以外に、流れというか概略をイメージすることが大事です。
そのためには教科書だけを読んでいたのでは、イメージがわきづらいかもしれません。できるだけ参考資料の写真に目を通してみることはもちろんですが、気軽に歴史の漫画や小説を読んでみたり、映画を観てみたりするのもいいですね。

最近ではネットをつかって、いくらでも画像検索ができますし、youtubeで動画を観ることもできます。
昔にくらべて勉強する環境が整っているので、活用しないのはもったいないといえます。地理の勉強なら、ぜひグーグルアースを導入して、世界中を回ってみましょう。

イメージ化は映像ばかりではない

教科のなかには、イメージ化という暗記の方法を使いづらいタイプのものもあります。
そういったときは無理にイメージ化しようと考えずに、ノートに箇条書きでまとめてみたり、概略を大きくとらえるように心がけましょう。そうすることによって、全体を俯瞰できるものです。全体の俯瞰こそが、じつはイメージ化になっているのです。大雑把な理解は右脳の担当であり、そうなるとイメージでとらえていることになるからです。

そのほか1冊の受験参考書を何回も何回も読みこんでいると、「本の真ん中あたりにあったな」といった記憶ができるようになります。それとか「あの人物の写真の左に書いてあったことだな」といった覚え方ができます。あたかも写真記憶のように、本ごと、ページごとの映像が脳へと焼きつく感じです。写真記憶というと、一瞬で記憶する高等テクニックというイメージがありますが、同じテキストを何回も繰り返して読み込んでいるうちに、同じような現象が起きるわけですね。

イメージとは、別の表現をすれば、脳内での神経細胞のつながりを密にするということです。
つまり精緻化です。ですから英単語を覚えるときでも、見たままのスペルと意味だけではなく、語源から考えたり、接頭語や接尾語から推測してみると効果的です。また同じ状況でよく使われる英単語とか、同義語、反対語といったくくりで覚えると、脳内でもつながりが増えるので、イメージ化に近づくことになります。それだけ覚えやすく、忘れにくく、思い出すときのルートが増えるということです。これこそが効果的な暗記方法のコツといえるでしょう。

イメージ化することで、たしかに覚えやすくなりますが、1回きりでは、だんだんと記憶が薄れていってしまいます。海馬に重要な情報と認識させるには、しつこいほど繰り返す必要があります。イメージにすると印象が強くなるので、海馬に重要な情報と認識させやすくなります。そうなると長期記憶にするための反復回数が、通常よりも少なくて済むわけですが、復習が不要というわけではありません。

たった1回で記憶できる機会というのは、そうそうありません。試験勉強では、右脳のイメージ化という暗記方法を使ったとしても、それほど印象が強いことは少ないものです。だからこそ、その後も反復する必要があるわけです。集中→イメージ化→反復。これこそが、効果的に暗記できる最高の方法となります。

あとがき

記憶法といっても、丸暗記の方法は忘れやすいものです。たとえば文中でも触れましたが、歴史の場合で考えてみます。歴史の年号を覚える場合、年号自体を語呂合わせにすることで、たしかにイメージ記憶ができます。しかし、それだけだと他とのつながりがないので、何十年後まで記憶に残ったとしても、あまり使い道のない記憶になります。いわば離れ小島状態です。ですから歴史においては、まずは全体の流れをイメージする。そういった「大きなイメージ」という土壌を作り、そのうえで語呂合わせなどを活用していくべきです。つまり2段階イメージ記憶法です。

文章を丸ごと暗記する必要はあるのでしょうか?よっぽどいいことを言っているとか、人生訓とかならわかりますが、教科書に書いてある「学術的な内容」において、文章ごと暗唱する必要はないと思います。要は、言っている内容が理解できればいいわけです。暗記方法は国語や漢文、古文、社会科、理科、英語などなど、教科によってやり方が微妙に違います。さらにいえば日本史や世界史、物理、化学、数学の方程式、現代文の長文問題、法律の条文、元素記号などなど、挙げればきりがありません。しかし、原理はいっしょです。集中して、イメージ化し、反復する。イメージしづらい場合は、ノートに概略だけをまとめたり、全体の階層構造を理解すればよいのです。

そのほか社会人でも文書の暗記方法とか、いろいろなテクニックをブログや2chで調べている人が多くいます。市販の赤シートをつかって、覚えたい箇所を隠す方法はよく使われています。しかし、赤い色が集中力を妨げるような気がしてなりません。また赤シートの方法では、歴史における年号の語呂合わせのように、部分的な暗記となるので、使い物にならない記憶ともなりかねません。イメージ化にすらなっていません。丸暗記する方法だからです。

今まで暗記術の方法やテクニックについて解説してきました。しかし、もっと掘り下げていえば記憶力や暗記力というものも関係してきます。記憶力は海馬の大きさに比例します。またワーキングメモリの機能も関係してきます。海馬はつねに覚えようとすることによって、神経細胞の数が増えていきます。つねに頭を使い、日ごろから暗記作業をしている人ほど、記憶力が高まるということです。それにたいして試験前だけ頑張る人は、なかなか覚えられない可能性があるわけです。日ごろから頭を使い、海馬を大きくする。そのうえで、集中→イメージ化→反復をしていけば、最高の暗記方法となるのではないでしょうか。